二つのイベント

23日と24日、似たような二つのスピーチイベントに参加した。“似たような”というのは、どちらも英語だけで行われたこと。スピーカーも参加者もほとんど9割以上日本人なのに、スピーチも質疑応答も英語だけ。どちらも定員は百名前後で入場無料。

Vabel Conference 2011

23日(日)のイベントは「Vabel Conference 2011」。平日の就業時間後、楽天タワーで。テーマは「テーマレス」。しいて言えば世界の課題の解決。六人のスピーカーが自由に各々の課題意識とその解決方法について話していた。会場との質疑応答も一度以外全て英語だけだった。

主催者はVabelというNPO。世界の教育と貧困の問題を解決しようと活動している団体だ。今のフィールドはインドとか。午後いっぱい、六本木の政策研究大学院大学で。

1000 English Speakers

24日(月)は「1000 English Speakers」。こちらもテーマはないといえばない。副題が「英語プレゼン大会」。英語でプレゼンするのが第一の目的だ。

主催者は湯川鶴章さんらが運営するIT系ブログメディアの「TechWave」。元々「IT業界の英語力の底上げ」をミッションとして掲げていて、千人の英語でプレゼンできる人材を生み出したいという思いから始めたとのこと。だからといって英語力を競う場にするのではなく、世界に打って出たいという熱意がある人たちに集まってほしいと。登壇した10人の英語の出来もプレゼンも様々だったけど、熱い思いが伝わってくるものばかりだった。

一方で

共通点が多かった一方、異なる点も少なくなかった。
「Vabel Conference」のスピーカーはすでに名を成した第一人者ばかり。森美術館の南條館長に始まって、トリは茂木健一郎さん。それに対して「1000 English Speakers」の方は(失礼ながら)知名度があると言えるのは頓智井口尊仁さんくらいだったと思う。ほぼ全員が世に出ることを目指す若い世代。もちろん年齢層は「Vabel」の方が高かった。会場は逆に若くないと目立つくらいだったけど。

テーマレスとはいえ、アートから社会問題まで内容も幅広かった前者とITやビジネスに焦点を当てたような後者。時間配分は「Vabel」が一人20分で「1000」は5分。じっくり聴かせるか、熱さを感じてもらうか。
「Vabel」の六名は英語力を含めて素晴らしく、真摯に誠実に会場の多くの若いみなさんに向き合って思い思いの強いメッセージを伝えてくれていたと思う。「1000」の10名も概ねよかった。チャレンジ精神に満ち溢れていた。

もっとも、「Vabel」では、設定がうまくいかなくてスピーチの順番が入れ替わったり、終了時刻を1時間近くオーバーしたり、運営が多少バタバタした印象も残ってる。その分じっくり聴けたとも言えるけど、次の予定があって途中で退出した人もいたかも知れないし(時間管理は大切)。
「1000」ではプレゼン開始から5分立った時に銅鑼を鳴らすだけでなく、終了1分前にアラーム鳴らしてほしかったかな、細かいけど。運営上の課題は初めての企画に付きもの。反省点は次回に向けてきっと改善されるはず。

そして

これら二つのイベントに続けて参加して感じたのは、先ず主催者のとんでもない熱意。各々の強い思いが起点になって、百人前後が参加する大きな場が成り立ったのだと思う。特にVabel代表のHaegwan Kimさんは少々勢い余ってつんのめってるる感じも含めてよかったなあ。ブログもとても面白くて、感心しきり。

そして、そのような中心の強力な磁場に引き付けられるようにして集まった多くの協力者の存在。VabelのKimさんはまだ20歳そこそこにも係わらず、世界中を回って数々のインタビュを繰り返し、その間に出会った人たちが今回も応援してくれた。会場の手配もスピーカーの一人でもある黒川清・制作研究大学院大学教授によるもの。ボランティアの学生スタッフも懸命に働いていた。
TechWaveも同様。楽天のみなさんも、その思いに共感したからこそ、よろこんで会場を貸し出し、運営に協力したのだと思う。

参加者も大勢集まった。どちらも申し込み多数で募集を途中で打ち切ったほどの関心度。それだけ世界を意識する人達、特に若い人達が増えて来たわけだ。いや、意識するまでもなく、自然にそうなって来たんだなあ。
近頃、国外への留学や駐在の希望者が減っているという調査結果など目にする機会があるけれど、決して今の若い世代を一括りにして“内向き”だのとレッテルを貼ってはいけない。これらのイバントがよい証だ。近頃出会う若い人達からもリアルにそう感じている。

最後に

二つのイベント、共に継続してほしい。その意志はお持ちのようだし、「1000」の方は今回のようなイベントとは別に、毎月一回、渋谷のustreamスタジオで英語プレゼンのブラッシュアップの場を設けてる。ありがたいことだ。

そして同様の素敵なイベントがさらに増えてほしいとも思う。ネットの上ですでに多くのことが実現されているけれど、やはりリアルに出会い、集まることの力は決っして失われはしない。

自分もまた参加するだけでなく、協力する、さらに運営することも目指したい。その意味でも非常に参考になった。大感謝。

〔ご参考〕