コープさっぽろの“オープンイノベーション”

OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)


日経ビジネス』今週号(7/17)のテーマは「売れる値上げ」。
298円の特売を止めて398円に値上げしたりしたのに売れ行きが伸びたというコープさっぽろ。「マジックではないロジック」「安くすれば客は増えるというけど事実は違う」。

298 円の大安売りを狙う“バーゲンハンター”を切り捨てて398円の安売りを長期間にすれば収益は増えるはずというロジックを生んだのはPOSデータのち密な分析から−−と書くともっともらしいけど、実情はスーパーマーケットの仕入れ担当バイヤーが数百点ある担当商品のPOSデータを分析する余裕がないらしい。そこでコープさっぽろは何をしたか?

その答えはPOSデータの取引先への公開。本来は極秘中の極秘である販売データを、食品卸やメーカーらにネット上でオープンにしたのだ。そうすると取引先は各々自社や競合他社のPOSデータを分析して売れる価格で提案する。「コープの60人のバイヤーだけで分析するより取引先を巻き込んだ方が精度が高まる」と。
さらに、コープさっぽろは農産・水産等の部門毎に年数回の研究会を催している。取引先各社の営業担当が新たな値上げの成功例を発表し、アイデアを共有する場である。相互に刺激され、新たな知恵が生まれる。「安過ぎても高過ぎても利益は増えない」「利益が最大になる最適価格がある」。

過去のデータから未来は読めないという業界の“常識”。しかし、本当にまじめに過去のデータを分析していたのか。今までは根拠のないバイヤーの経験や勘、そして度胸(!)で値付けしてきたのではないか。売れる価格・正しい価格はデータに表れた消費者の意思・行動を読み取るところから始まる。小売業の店側だけでなく、仲介・卸や生産メーカーも集まって、値付けのプロセスに参加して。

今までクローズにしてきたデータをオープンにする。さらに公の場で大勢がアイデアを発し合う。まるでオープンソースのコミュニティのよう。そして、値上げしたにも係わらず今まで以上によく売れるという逆転。POSのデータもGoogleの検索ログやAmazon.com上の購買ストリームと同じだなあというWisdome of Crowds。みんな集めて、みんな集まって、みんなで考えるのが大事なのさ。