「そうなったら……スゲーおもしろい試合だと思います」

題名は説明無用と思われる『ジャイキリ』のセリフ。大阪Gに0-2で負けてたハーフタイム、ETU監督・達海猛がホーム・隅スタのボールボーイに尋ねた質問への返答だ。12月6日の試合前のフクアリで貸出先から返って来た第8巻に載っていた言葉。

達海:えーではここで問題です
ボールボーイ3人とカメラマン2人に聞きました
百合:は?
達海:この試合…ETUが後半大逆襲したらどう思いますか?の問いに…
百合:ちょ…ちょっとそんなことやってたの!?
達海:うん……おどおどしてなかなか答えてくれなかったけど
百合:(そりゃそうでしょ ビックリするでしょ)
達海:そんななか……一人の少年が勇気を振り絞って言ってくれました
そうなった ら……スゲーおもしろい試合だと思います
結果的に全員がその意見に賛同しました


あの時、逆転したらスゲーなって思った、強がりでも何でもなく。その場面を想像して一瞬ニヤニヤしたと思う。すぐに素に戻ったけど。

あの日は朝から何だかおかしかった。フクアリの中に入ってからも落ち着かない。あちこちウロウロしてた気がする。
選手紹介が終わってメインスタンドに戻っても座っていられない。結局、「WIN BY ALL!」コールが始まると同時に席を立ち、旗二本抱えて階段を駆け上がる。
出入り口を出てゴル裏に向かおうか?と思ったものの、入場する選手から目を離せない。そのまま通路に残る。「通路・階段では応援しないでください」と書いたプレートが目に入ったので、振り向いて係の人らを見たらニコニコ笑ってたので立ち続ける。10m横に黄ヘル被って旗掲げたおっさんとかいたし。
結局、ずっとそこにいた。後はもうひたすらだった。

残り15分、得点が入る。斜め前、最後列に立ってたおっさんが抱き付いて来る。横に来たあんちゃんと、前の夫婦やその嬢ちゃんと、後ろの係の人たちとハイタッチ。旗振りながらアウェイ側までダッシュで往復する。もう泣いてるんだか笑ってるんだか。……そんなことをほぼ四回繰り返した。目の前は1点目、2点目と立ち始め、3点目ですでに総立ちだった。

フクアリはまだまだよく鳴る箱なんだからと思い続けて来たけれど、最終幕の大詰めでやっと最高の響きが得られるとは。どのコールもどのチャントもそれまで経験した最大値を超えていた。

試合終了。定位置に戻る。コールもチャントの声を聞いたことがない人たちが大きく口を開き拍手しながら立っていた。両隣のおっさんと握手する。いつもうるさいヤツと思われていたに違いないけれど。斜め後ろから肩を叩かれる。振り向くと手を差し伸べられていた。もちろんガッチリ握手する。

達海猛は続けた。

確かに俺達は予想以上にやられたかもしれない……
でもね
圧倒的劣勢のなか2点差をひっくり返す
1点差じゃなくて2点差
コッチのほうが面白い ははっ」


あぁ、そのとおり。……全くたまらんけど。:)

ある東京サポは書く。

魔の10分。あまり記憶がございません。
だって、それまでの試合運びも良かったし、巻に対しても佐原がよく対応していたし...
この期におよんで、スタメンに博打をうってきたミラー監督。
その10分間、変わっていくスタジアムの雰囲気に選手だけではなくスタンドの自分たちも完全に飲まれてしまいました。
反省反省のフクアリ劇場


あの東京サポが飲まれたと。

そして、東京監督・JFKは語る。

(フクアリの雰囲気にのみ込まれた)2-2になって、選手は経験したことのない、自分たち11人以外が全部敵になったというか、その空気を遮断できなかった。2-1、2-2になった時の空気を初めて学んだ選手が多かった。選手は思い知った試合。(2-0で)このゲームは決まった(と考え)、気が抜けているわけではないが、(何が起こるか分からないことを)思い知ってなかった。思い知らないと学べない
「経験ない空気 遮断できなかった
(中日スポーツ)


来期もまたフクアリを舞台にこの国最高レベルの試合を観続けられる、ジェフユナイテッド市原・千葉というチームを応援し続けられる、この幸せ。