[DISH] 中村やエッセンス

海老名の駅から歩いて10分・15分。どう見てもただのどこでもドア、よく見て目一杯想像しても幻のバーの入口にしかみえない重いドアを開けると、やっぱしラーメン屋の白のれん……いや違うぞ??とさらに進むと拡がる視界に一瞬のキッチンスタジアム。ステンレスピカピカの舞台では何人かもう細かそうな仕事始めてた。

初めはもちろん泡なスプマンテはMontebekko Brut。テーブルの上、目の前で繰り広げられる楽しいラーメンエクスペリエンス。

1. 液体窒素のウェルカムシャーベット
  ×グレープフルーツとバジルのエッセンス
ステンレスボウルの中で液体窒素に浸ったバジルがパリパリ砕かれ、グレープフルーツのジュースがシャキシャキ固まってく。小さなスコップ一口の始まり。

2. 細麺の三編み揚げパルミジャーノ絡め
  ×白トリュフのエッセンス
やっぱしここはラーメン屋というコースの始まりを告げる、まっすぐな三つ編み。パルミジャーノ濃いのに、白トリフがガチンコなもんで酔っ払いました。

3. 稚鮎のフリット、フォンプディング
  ×蕪のクーリエッセンス
春はアユ、春はカブ。はらわたの苦味を感じたかったり、止したかったり。持ってきたフェルトンロードのブロック1が好フィット。残ったカブ、ガブ飲み。

4. 中村屋寿司スタイル
  ×鰹のエッセンス
寿司だよ、寿司! しかしここはラーメン屋、フフ。ナマめなカツオも炙ったのも味が強いね、春ガツオ。皿のカドには金目のキモ。甘みあるリースリングインスパイヤされたシェフのスペシャルおもてなし。軽く焼かれた表面と内なるもののバランス感の超絶、ブラボー。

5. 冷麺とビーフンの双流麺
  ×キャビアノレソレのエッセンス
キャビアソーメンの進化形? キャビアビーフンをノレソレが繋ぎ、ノレソレと冷麺をビーフンが繋ぐ。舌触りの絶妙。この辺で赤はマルケのサン・ロレンツォ……だったかな。

6. 根菜のイミテーションヌードル
  ×チーズの出汁エッセンス
メシのようなラーメンもあれば、ラーメンのようなヤサイもある。星印のパプリカのエスプーマ。チーズラーメン、けっこうありかも。かき混ぜて召し上がり。

7. 芝エビの蕎麦粉揚げ、チャーシュー、生青海苔付け麺
  ×イカの出汁エッセンス
しばしの間、どうやってイカの出汁?論議。水の底のエビが青ノリの縁組でイカと出会う。大皿一枚スルスルと。もらったグラスはソアヴェ、結局二杯。

8. キンキのグリルとニセ雑炊
  ×金目鯛の出汁エッセンス
ラーメンのようなヤサイもあればゾースイのようなラーメンもある。軽やかな半身のキンキは、アブラも乗ってサクサクと。今日のメインだもんね。

9. シメの塩ラーメン
  ×中村屋のエッセンス
いや、これが今日のメインだよ。なぜならここはラーメン屋。なんてこんなに透明なスープ。二本の試験管の二種類のオイルをドンブリの中で調合すると、化学変化する味は人各々。ほんとうにきれいなラーメンでした。

10. 柚子の球体ジュース
  ×カプセルエッセンス
キャーッ!、口の中で予告なしに破裂するジュース。何度でも試してー。

11. モンブラン
  ×ミックスベリーの凍り粉エッセンス
グレープフルーツがミゾレなら、ラズベリーはパウダースノー。モンブラン?……一瞬ラーメンかと思ったぜ。

12. 中村屋の羊
  ×抹茶のパウダーエッセンス
ヒツジです。今日は多数決でメディアムレア。全員で手づかみ、思い切りムシャムシャ。抹茶も意外に合うんだね。おしまい。

仕上げの台上、遠目にもシャキシャキ動く手が引き付ける。さらに奥では切るやら焼くやら何だこりゃ。笑顔の好青年らの余裕も緊張感も伝わってくるぞ。
シンプルな、しかしエレガントなカトラリーも空間も。ひたすらおいしく楽しい四時間でした。よく笑いましたよ、料理の驚きに。また来るぞー。ヘヘ。:D