今年初めての悔し涙

……だったと思う。何しろ今期初の敗戦だったのだから。しかも……

小雨混じりの曇り空の下、湯郷ベルのホームスタジアムはまさにどアウェー……のはずだったが湯の郷の人々からの圧力を感じるほどの強い声援はなかったと思う。全日本女子サッカー選手権大会三回戦、ジェフレディース湯郷ベル。13時30分、静かにキックオフ。

GKマユ。最終ラインは左からツカサ、サチエ、アサミ、フミ。二列目にユッキー、ショーコ、ヒロミ、ユイコ。ツートップはミッチーとミホコ。ミホコが下がりめ。4-2-3-1と言った方がよいかも知れないけれどどうでもいい。機を見てDFからも攻め上がる流動的なスタイル。

立ち上がりは互角、いや、様子見風な湯郷より、勢いで押していたかも知れない。王者としてのチャレンジャー精神。
共に前線での細かなパスの繋ぎがあればロングボールからのカウンターもあった。次第に高まる攻めの応酬。互いに決定機を迎えてはわずかにゴールを外していた。

ミッチーの脚力は湯郷DFをしばしばあわてさせていた。スピードあふれる飛び出し、そしてあきらめないチェイス。ミホコのトリッキーなパスの散らしも効果的だった。時に撃つミドル。ゴールライン際のDFを次々かわすユイコ。NZの再現のように。ユッキーはドリブルで突破する。二人に囲まれても突破する。いつもの攻めの形は出来ていた。マユは落ち着いてボールをさばき、アサミはヘッドで弾き返す。こわかった宮間あやのFKも微妙にコントロールが定まらない。前半0-0。

後半も開始からダッシュ&ゴー。その中で生まれたショーコのCKは正確にゴール前に落ち、キーパーも交えた混戦からヒロミが押し込んで先制! 1-0。抱き合ってよろこぶ選手たち。狂喜する俺たち。

しかし、クセ者はやはり宮間あやだった。左サイド、カウンターような形でボールを受け取るとゴールに向かって前進。一人かわして向き合ったマユの頭を越える一閃、斜め45度。1-1。

一進一退が続く中、ユイコに代わってサトミが入り左SBに。フミが前線に上がる。すかさずプレスそしてプレス。
アサミと組むサチエの出足が一歩早くなる。カット。サイドから攻め上がるツカサのロングィード。
40×2、全力で走り続けた80分が終わる。雨足多少強くなる。

小休止の後の延長戦。ミッチーのスピードはゆるまない。前線から奪い繋ぐフミ。みな、走る走る。濡れたユニフォームに重くなる体をはげまして。ショーコのCKからユッキーのヘッド。20分がアッという間に過ぎていく。PK戦へ。

最後に観た敗戦がPK戦だった。去年の末の入れ替え戦
一人目、ショーコが落ち着いてて決める。マユ、跳ぶも届かない。1-1
二人目、ミホコ。力んだか、ふかしてしまう。マユ、届かず。1-2。
三人目、アサミは動じない。マユ、もう一息。湯郷のゴールは全てサイドネットへ。2-3。
四人目。ツカサは危なげなく。一方、湯郷のシュートはマユの伸ばした両手をスリ抜けるもサイドバーを弾いてゴールに収まらず。3-3。
五人目、ヒロミ。しっかり右足で。マユ、及ばず。4-4。サドンデスへ。
六人目はミッチー。サポ、祈る。決める。マユ、触れられず。5-5。
そして七人目はフミ。一年前の入替戦でのPK。決め切れず、泣き崩れた彼女にコールを送ったことをおぼえている。今ここで決めて雪辱を晴らせ。……しかし、成らなかった。それまでのシュートに反応すら出来ていなかった相手GKが止めた。崩れ落ちそうなフミを抱き抱えながら湯郷のシュートを見つめる仲間。マユ……止められなかった。5-6、試合終了。

スタンドの前にやってくるジェフレディース。最前列に降りる十名強のサポと小林さん・スタッフたち。目に映るのは目を赤くはらした選手たち。一ヶ月ほど前の歓喜の涙とは違うそれは、対等にやり合い、勝利まであと一歩まで近付いたからこその悔し涙だったのだと思う。チャントで迎える。
「いーつも勝利を目指ーし〜 戦え、ジェフレディース
来シーズン、L1の舞台での雪辱を期して。